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江戸5

「家康、江戸を建てる」の最終話。
「天守を起こす」。

これまでの4話は江戸を作るにあたっての難題に立ち向かって来た職人や役人が主役になって物語を引っ張ってきたが、この第5話では二代目将軍秀忠が主役となる。

江戸城の顔となる天守を建てるお話しだが、そもそも天下統一を成した後に天守自体を建てる必要があるのか、ということが議論される。

権威の象徴として、物見やぐらとして、大名たちに金を使わせるため、など建てる動機が色々と上がりつつも家康は建設を決める。
大阪城や安土城の天守は黒壁であったのに対し家康は白壁の天守を命じ、どうして一般的ではない白の天守を建てるのか?という問いを秀忠に投げかける。

今回も白壁を作るための漆喰(石灰石)が関東には十分にないことから、材料探しに奔走する話もあり青梅の成木で質の良い石灰石を見つけてそれを運ぶために整備した道が青梅街道になったという豆知識は健在。

ただこの話のメインテーマはなぜ天守が白なのか?
秀忠は混じりけのない白は純真無垢な平和の象徴。万人に戦が終わったことを示す意味があったのだと述べる。

果たして家康が白い天守に込めた真意とは?

当時何もなかった湿地帯で寂しい漁村があっただけの土地が今では日本の首都になっている。何もなかった所へ当時の技術をつぎ込んで理想郷を作り上げたともいえる。実現可能かどうか分からない難題が命じられた家臣たちの執念で全てが解決されたことで出来た江戸という理想都市。

小説としてすごく面白い本ではないと思うけれど、知識が勝手に入ってくる良い本だと思う。