荒神

宮部みゆきの「荒神」。これは朝日新聞で連載されていたらしい。宮部みゆきがゴジラみたいな怪獣小説を書いたらこうなった、という作品。

時は関ケ原の合戦から100年の元禄時代。東北の入り口に当たる香山藩と永津野藩が大平良山と小平良山を境に緊張状態にある。そんなある日、香山藩側の小村が謎の怪物によって1夜にして壊滅するというところから物語は始まる。

主人公は3人いて壊滅した村から何とか逃げ延びた蓑吉という少年と永津野藩御筆頭の妹である朱音、香山藩の侍の小日向直弥。この3人の視点から怪物を巡る物語は紡がれる。

突然現れた怪物は一軒の番小屋くらいの大きさで大きなトカゲとガマガエルと蛇を足したような姿をしている。素早く移動する際は手足を畳んで蛇のように動き、二股に分かれた尻尾で人を捕まえて食べる。あるいは舌を伸ばして食べる。その皮膚は矢も刀も効かず、周囲の景色と擬態して姿は見えない。怪物が動くことで竹藪が分かれて空間が出来ることでそこに居ると分かる。
また口から胃液を吐くがその胃液は人も鉄も溶かす超酸性の水でしかも可燃性で周りに火があると一気に燃え上がる。

また、大群で頑張ってある程度弱ると脱皮して第2形態となる。少し小型化して直立2足歩行になり動きが速くなる。舌は二股に分かれ頭も鋭くなって蛇に近くなる。

この無敵とも思われる生物にどうやって戦いを挑むのか、どうしてこの怪物が現れたのか、序盤はパニックムービーを思わせるハラハラする展開から終盤にこれらの謎が一気に解き明かされて結びの章に繋がっていく。
さすがは宮部みゆき。数々の布石をキレイに回収して後に疑問を残さない上に3人の主人公がそれぞれの立場から動く中で最後には同じ場所に集結しての最終決戦に臨む展開の見事さ。

これを全部1冊でやっているのはスゴイ。

悲しい結末ではあるけれど、なぜか後味は良い作品だった。