ソロモンの偽証1

SF小説が続いていたので趣向を変えて今度はミステリー小説。先日読んだ「荒神」が完成度の高い作品だったので同じく宮部みゆきさんの傑作ミステリー「ソロモンの偽証」。映画でも前後編で公開されていたので、代表作の一つと言っていいだろう。

ただ読み始めて気が付くのが、全部で6巻にも渡る長編だということ。上下巻くらいだと思っていたけれど、思っていた3倍の長さになる。

お話しとしては、クリスマスイブに転落死した中学2年生を巡って様々な登場人物の視点からその真相に迫っていく物語のようだ。
荒神では主に3人の登場人物の視点で描かれていったが、今回は割と細かく各ブロックで登場人物の視点が変わる。1巻の時点ですでに5,6人の視点から物語が進んでいる。
こういう書き方は宮部作品の一つの特徴なのかもしれない。
そして、丁寧に緻密に人物の心情、駆け引きを会話に交えながら書いている。リアルな世界での人の会話というのは実は内面が忙しい。相手の立場、自分の気分、駆け引き、情報の開示具合のコントロールに加えて、今の一言をどう思っただろう?、どう思われただろう?、という不安なども丁寧に丁寧に表現されている。

まだ6分の1を読んだ時点では、転落死が自殺なのか、他殺なのか、事故なのか、というのは確定されていない。そして、思春期の中学生のそれぞれの悩み、嫉妬、悪意。その他不穏な登場人物もあり先の展開が読めない面白さがある。

先は長いけれど期待感がある作品の第1巻。