異星の客

「夏への扉」「宇宙の戦士」と読んできて、ハインラインの名作はとりあえず一通りおさえようと決めた。
SFの名誉ある賞であるヒューゴ―賞を取っていながらも問題作とも言われている「異星の客」を今回は選んだ。

まずかなり小さい字で700ページを超えているのに慄き、しかも内容が難しい。前に読んだ2作は若者から読めるタイプだったけれど、これは難しかった。長いし難しいのはなかなか厳しい。

内容は第一次火星探索隊が火星に行き、当時のクルーは全滅していたものの、火星で生まれた子供が唯一生き残っていて第2次探索隊とともに帰ってくる。彼は人間でありながら火星人に育てられていた。火星人的な思想と能力を持っている。あとは法律的には地球において火星の全ての権利を有した存在になっている。つまり火星を所有している人間とされた。

本の前半では彼の権利の大きさから、何とかして連邦政府は彼を閉じ込めておこうとする展開があって、その後で彼を逃がして守る人達の場面に移っていく。
彼を守る勢力が事務総長と交渉して何とか彼の有する権利を認めさせる。

中盤には勢いのある宗教団体が火星から来た男に接近し、火星的な思想と地球の宗教的思想が彼の頭の中で葛藤を起こす。そして、身分を隠して普通の仕事をしながら人間を理解していく段階があって、自分で新興宗教を興して火星的思考と能力を水を分けた兄弟(信者)たちに教えていく。

と、こんな感じでかなり渋い展開が続きつつ、火星人の物や人を消す能力、浮遊させる能力、テレパシーなどを随所に織り交ぜながら、死者を食らう文化、雑婚などのモラル的なタブーも盛り込んだお腹いっぱいな作品だった。

本の分厚さの存在感と割と過激なテーマを含んでいることからかヒッピーの聖書とも言われているらしい。

今のところ「夏への扉」が一番面白くて、この作品は「宇宙の戦士」と同じくらいの面白さだと思う。内容的にキチンと理解できる脳みそがあれば本当は一番面白い可能性もあるのだけど・・・。

さて、これでハインラインは「月は無慈悲な夜の女王」を読めば代表的なものは網羅したことになるだろう。
「月は・・・」と「宇宙の戦士」はガンダムの元ネタと言われているから、世界観的にはまた宇宙の戦士に戻ることになるだろうなぁ。